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第70話 ここでは弁護士として話せ

Author: 八月 猫
last update publish date: 2026-08-13 09:01:12

 木曜日の午後二時。

 皇グループ本社の会議室には、東栄都市開発との初回協議に必要な資料が並べられていた。

 帝人の右には榊原。

 その先には都市開発事業本部長と法務統括責任者が座っている。

 本来なら、この段階の協議に帝人が出席することはない。

 担当役員と法務部門が条件を詰め、まとまらない部分だけを最終決定者へ持ち帰る。

 それが通常の流れだった。

 だが今回は、相手が提示した条件の中から妥協点を探すつもりがない。

 契約変更を求めるに至った事情を明らかにし、事業の主導権と責任の所在から組み直す。

 ならば伝言を重ねるより、自分が直接聞いた方が早い。

 帝人が出席を決めた理由は、それだけだった。

「東栄都市開発の皆様がお見えになりました」

 榊原の言葉から間もなく、会議室の扉が開いた。

 先に入ってきたのは、東栄都市開発の専務と事業責任者。

 その後ろから、一人の男が姿を現した。

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